セトの物語 (短編小説)

お読みいただく前の注意書き(こちら必ずご覧下さい)

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ソマリアの貧困層が集まる街でセトは生まれた。

父親は日雇いの仕事で働いてはいるものの、ドラッグ中毒で仕事も行ったり行かなかったり。
母親はセトが3歳の時に置手紙ひとつすらなく突然家を出て行ってしまった。
その日を境にセトに対する父親の暴力が増していく。

セト9才の夏、彼が庭でトカゲと遊んでいたところ父親に呼び出された。
父親が着る作業着の汚れている服を洗濯していなかったということで散々殴られた後、
両足をつかまれて逆さ吊りにされ、水の入ったドラム缶に頭からドボン!
水につけては引き上げを何度と無く繰り返す父親。この時セトは本気で殺されると確信した。
その瞬間内から沸いてくる黒く恐ろしい感覚に気付いたが、
次に気付いた時は水でびしょびしょに濡れた服を着たまま、街外れにある朽ち果てた変電所の門前に座っていた。
辺りは枯れた木と砂しかない。

一体僕は何でここにいるんだろう。殺されるはずだったんじゃ…

あの時何が起こったのかわからないが、どうやら助かったらしい。
きっと父親に捨てられてここにいるんだと思ったセトは、
多少問題を起こしながらも地方を転々と渡り歩いた後、18の時に果樹園を開き、
自分で立てたオンボロ小屋で以後5年間貧しいながらものんびりと暮らすこととなる。
あの事件が起きるまでは…。

あれは果樹園での収穫の時期、秋の始めごろだった。
収穫される果物目当てで武装した強盗2人組みがセトの小屋に押し入ってきた。
うむを言わさず2人組みのうちの一人がセトに襲いかかる。
『生かしておく』という概念はこのあたりの地区ではまず存在しない。『殺るか殺られるか』のみだ。
散弾銃の銃口を突きつけられた瞬間、セトの意識は消えた。

・・・・・

まぶしい日の光でセトは我に返る。

さっきまで家の中にいたはずなのに、何故か庭先に立っていた。
手がベトベトする。

血だ

・・・・・

どこも痛くない


セトの服が全部染め上がるほどついたそれは返り血だった。
俄かに不安がよぎって小屋のほうを恐る恐る振り返るセト。小屋の扉は半開きになっていた。
しかし近づかないでも何が起こったかセトにはわかった。
半分開いた扉の隙間から血まみれの手がダランと垂れている。
あの時自分に突きつけられた散弾銃が真っ二つに折れて、自分の足元に落ちていた。
今までも何度か意識を失って違う場所に立っていたり、手が汚れていたりしたことはあったが、
ここまで悲惨な光景を目の当たりにしたのはこれが初めてだった。
まさかとは思ったが、どう考えても彼らを殺ったのは全身血で染めてこの場に立っている自分しかいない。
恐怖に悲鳴を上げそうになったがグッと堪えた。

自分がやったんだ…

絶望

もうどこからも逃げたくなかった。
行く場所なんてない。
また意識がなくなってこんなことが起きるのなんか真っ平だ。
そう思ってヨロヨロと反対方向に歩き出そうとした瞬間、低い声が頭の中に響いてきた。

『どうだ、嬉しいだろ?』

驚いてあたりを見回すが誰もいない。するとまた頭の中に声が響く。

『お前が望んでることを俺が実行したまでだ。お前が思えば俺がやる。そう、俺はお前でお前は俺なんだ』

何がなんだかわからなかった。最初は誰か真犯人が近くでしゃべっているのかと思ったが、次第にそうではないことに気付く。
外の空気振動から伝わってくるものではない。直に頭に響く不思議な声。しかし確かにそれは自分の声だった。

「誰?ぼ…ぼくはこんなこと望んでいない!君はなんてことをしてくれたんだ…なんてことを…」

『望んでないだって?俺は感じたな。お前は本当は殺しが大好きなんだ。ずっとそう望んでいるのを俺は知ってる。親父だっていつかやってやろうと思っているのだって俺は知っている』

「そんなこと思っていない!父さんのことは一切言わないでよ!君は誰なんだよ!」

『おいおい、そろそろ自分と向き合おうぜ相棒。考えたことあるか?【自分とは何か】を。
ヒトっていうのは自分を良く見せようとして表面は善人を装う。でも何故善く見せようとする必要がある?もともと善人であるなら努力なんていらないだろ?
その意味がわかるか?自分でも直視できないような恐ろしい部分を見られたくないからだ。
自分でもこれが自分であると認めたくないくらい深い闇の部分。それを心の奥に強く押し込めて、いつしか忘れてしまう。
でも決して忘れちゃいけない。
心の奥にずっとしまわれているもう一人の自分というものを。』


「・・・・何が言いたいの?」


『お前にもそれがある。深い闇の部分。表向きのいい面はお前。そして深い闇の部分が俺だ。
信じようが信じまいがお前の自由だが、これは真実だ。ふたりで1つなんだ。お互いどちらかが欠けてもいけない。この世界で生きられないんだよ。
わかるか?
お前は光で俺は闇。つまり俺たちは死ぬまで一緒だってことだ』

セトは深く長くため息をついた。
ショックだった。本当は心のどこかで、この事件の真犯人は自分ではないと願っていた。
しかしどうだろう、頭に響くこの声は自分で、その自分がコレをやったと言うではないか。
否定する理由が見つからなかった。足元を見つめていると、急に涙があふれ出てきた。

「・・・・こんなことがまた起きるなんて・・・・僕はもう生きたくないよ・・・・」

『そんなこと、俺が許さない。俺は絶対に死にたくないね。お前だけだったらとっくにこの世から消えてた。俺がお前を守ってきたんだ。感謝しろよ。俺は何が何でも生き抜いてみせる!
お前が今後死のうとでもしてみろ。俺がこの肉体を完全に支配してやるからな。お前を永遠に眠らせてやる』

「僕は・・・・あぁ・・・これからどうすればいい?わからないよ。わからないんだ・・・・」

『そんなの俺が決めることじゃないね。だが近況でひとついいこと教えてやろう。さっき誰かが俺たちをみてたぜ。そうだな、ありゃ警察に通報したんじゃないか?逃げてもどっちみち捕まるのは時間の問題だな』

それを聞いてセトは少し考えてから、足を引きずるようにしてゆっくりと歩き出した。
どうせ捕まるなら、逃げるなんて体力を消耗するようなことはしたくないと思った。
歩きながらさっき心の中でもう一人の自分と話していたことを思い返す。

”表向きのいい面はお前。そして深い闇の部分が俺だ”

”俺は何が何でも生き抜いてみせる”


・・・・・・・



『悪と善は紙一重だと思わないかい?』


また突然頭の中に声が響く。

「え?なんだって?」

『なんだ、忘れたのか?ずっと昔にお前が言った言葉だよ。くっくっ、まさにそうだと思ってな。』


悪と善は・・・・


セトは朦朧とする意識の中、朝日に照らされてまっすぐに伸びる小道を足の指先で掴むように歩いた。
小鳥が木々の間からさえずり、彼はふと足を止める。


「ねぇ、君は悪なの?」

・・・・・・・



『お前自身だよ』

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Comments
comment 毎回楽しみに閲覧しています。
ウォンガードと申します。毎回楽しみに閲覧しています。

どのキャラクターもとてもかっこいいですね!

特にビリーやボイルが非常にかっこよくて自分のお気に入りです。
ファッション性に優れていて原宿みたいな感じですね。

それで本題ですが、今回のセトの物語はとても悲しいですね。

このようなシリアスで暗い話は非常に大好きです。セト編は一番好きですね。

あいかわ・えみすけ様のどの短編小説もそうですが非常に完成度の高い作品であると私は思います。特にセト編、マーラ編、ショータ編が非常に気に入っています。あいかわ様は文才がある方なんだろうと思います。イラストも非常に完成度が高いですね!あと世界観も素晴らしいですね。

>>『悪と善は紙一重だと思わないかい?』と言う部分と、

>>『お前自身だよ』と言う部分は成る程なと思いました。

本来のセトはすごく優しい人だから好きですね。あいかわ様も日誌の文体で見る限り優しい方なのでしょうね(^∀^)У

これからもイラスト&小説等を頑張って下さい!!応援しています!!(^∀^)У

押し付けがましいと思われるかもしれませんが、ダークでシリアスな内容をこれからも書き続けて下さいね。とても楽しみにしています!!(^∀^)У
comment はじめまして
ウォンガードさんこんばんは、はじめまして!
丁度サイトを管理してたもので、即レス失礼します(^^q

いつも見て下さっているということで、とても嬉しいです!どうもありがとうございます!!
ビリーやボイルのファッションは私個人が憧れるファッションでもあるので、自身も彼らが好きです(笑)
でもビリーが一番描きにくかったという盲点がありまして、ビリー描きたいけど描けないというジレンマに苛まれてます。

セト編お褒め頂きありがとうございます(><)
いえ、実は小説なんてほとんど初挑戦のジャンルだったので、書き終った後もこりゃきっと駄目と思ってました。
それでもせっかく書いたので目をつむって公開した作品だったんです。
なので、まさかこうしてお褒めの言葉をいただけるだなんて思ってもみないことだったので、
とっても嬉しくてテンションあがりました!そして救われました~!
 
私自身はよくセトみたいな人だと言われるんですが、自分ではサタチルメンバー全員の気質を合わせた複合体だと思ってます。きっとみなさんもそれぞれ彼らと似たところがあるに違いないと思ってるんですが、そんなこと言ったら怒られそうなので伏せておきますねww

今回書いてて気付いたのですが、ダークシリアスな小説が実は得意だった(書きやすかった)ということを(笑)
なのでまた書く機会が出てきたら新たなストーリーを書きたいですね。


コメントどうもありがとうございました。
それではウォンガードさん、このようなサイトではありますがこれからもどうぞよろしくお願いします!
comment こちらこそよろしくお願い致します。
こちらこそよろしくお願い申し上げます!!

私もえみすけ様からお返事をいただき大変嬉しく思います。(^∀^)y

非常に優しい方なのですね。(^∀^)y 有難うございました!!(・∀・)y
comment はじめまして!
サタンズチルドレンよく見てます。
今のPCの壁紙もサタンズチルドレンです!
でも今回初めてキャラクターにストーリーがある事を
知りました。セト以外も是非読ませていただきますね!
comment
karuparasukeさん>

コメントありがとうございます!!
そして大変失礼しました・・・>< コメント自体久しぶりなもので、まさか頂けるとは思ってもみなかったのでしばらくチェックしておらず、返信が遅くなるという事態になってごめんなさい!

PCの壁紙もSCというのをきいて泣きました。
個人ストーリーもあるので、ゆっくり読んでいってください~
今後ともどうぞよろしくです^^*


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